どんな治療を受けるかは自分で決める

2年半以上に及ぶ副腎疲労からの回復の道のりを、今のドクターの指導で進もうと決めた理由は、彼がfunctional doctor(機能性医学の医師)であり、一般的な総合診療医ではないからです。

病気になった時、どの病院に行くか、どの医師に診てもらいたいか、どんな方法で治療したいか。実は選択肢はあるのですが、あまりよく考えずに、近所のクリニックや、地元の総合病院に行きますよね。とにかく早く痛みを取ってほしい、熱を下げて欲しい、と願って診察を受け、出された薬を飲みます。

病状によっては、それが正しい選択肢になる場合もありますが、病気によってはまったく異なる治療法を選択しないと、なんの解決にもならない場合も有ります。

欧米で一般的な医療のタイプを見てみましょう。僕がなぜ、functional medicine(機能性医学)の治療を受けたいと思ったかがわかるはずです。

medical doctor

従来の西洋医学

体の不調が現れたら、それを引き起こしている原因より、出ている症状をなんとかしようとするのが普通の医療です。

治療には、薬を多用し、外科手術などの体にとっては侵襲的な処置を行います。

臓器は基本的にはそれぞれ個別のもので、体はその臓器が繋がっているできている一繋がりのシステムと見なされています。一つの臓器に起きている問題を取り除く、という考え方です。

僕のドクターは、このような従来の医学モデルは、救急医療、感染症、外科的な分野においては、過去100年に渡って、目覚ましい進歩を遂げたと言います。しかし、慢性的な疾患(まさに副腎疲労など)の治療、栄養面、予防医学に関しては、それほどの効果は上がっていません。

慢性疾患に悩む患者はもちろん、それらを治療する医師にとっても、従来の医学に基づいたやり方では成果が見られないことに不満を募らせているのです。

ホリスティック医学(全身的医療)

ホリスティック医学は、局部的な考え方ではなく、全身を包括的に考えるアプローチです。

薬や手術などで不具合を処置するだけでは、また別の病気が発症するだけで、根本的な解決にはならないとし、人間の持つ自然治癒力を重視し、その力を強くすることで病気にならない健康な体を作ると言う考え方です。

健康は、体だけではなく、body-mind-spirit(体-心-精神)という視点で、究極の目標は、心と体と精神を健やかに調和させることです。 これを達成できれば、病気にもならないし、健康状態を維持できるとしています。

ホリスティック医学の考え方は非常に素晴らしい概念ですが、一つの医療モデルとしては漠然としているし、治療のアプローチとしてもあまりにも広すぎると考える人が多いようです。

massage

自然療法

自然療法も、ホリスティック医療と同様に、自然治癒力を重視し、不調の原因を取り除くという考え方で、幅広い療法を使います。

アロマテラピー、マッサージ、音楽療法、スパでの施術、ハンドマッサージ、リフレクソロジー、鍼、インドのアーユルベーダなども、自然療法の一つとして使用されます。

中には、食事療法、ライフスタイルの指導、解毒など、限られた療法のみに焦点を絞って厳格なやり方を貫いている自然療法医もいます。

現在、アメリカではいくつかの州で自然療法医の免許制を取っていますが、多くはありません。 まだまだ、自然療法についての明確な基準も教育制度も確率されてはいません。

統合医療

西洋医学と、考え方の異なる伝統医療や代替療法(ハーブ、ホメオパシー、カイロプラクティック、鍼など)などを組み合わせて統合的に行う療法です。

統合医療は間違いなくホリスティックの考え方なのですが、治療には薬も使いますし、ハーブや漢方などの薬品ではない自然なものも使いますし、断食も一つの療法だったりします。

ただし、統合医療が焦点を当てているのは、不調の根本的な原因を見つけることではないということです。

機能性医学

機能性医学は、複雑な慢性疾患や生活習慣病の根本的な原因を知り、予防や対処法を理解して一人一人に合わせて根本的に治療する統合的アプローチです。

機能性医学は、上で話した医療モデルすべて取り入れた、最も包括的で効果的なアプローチです。

西洋医学と代替医療、伝統的医療などが統合されていますが、最も重要視しているのは、有効性と安全性です。

また、非常に複雑で慢性的な問題には、生物学的システムのアプローチを使用します。すべてがつながっているネットワークだということです。

機能性医学は、病気はこれまで積み重ねてきた生活、食べ物、仕事、環境などの結果であるという考え方で、遺伝学、環境および生活様式がどのように相互作用するかという最新の科学的な研究も融合しています。

病気の根本的な原因を特定することこそ、最も重要な要素なのです。

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副腎疲労は、背中にメスを入れて、副腎という臓器に何かの処置をすれば良くなるというようなものではありません。非常に複雑で慢性的な不調です。

なぜこんなことになってしまったのか、根本的な原因を探り、自分の生活上でなにか問題があったのであればそれを改善して、副腎疲労から回復しなければなりません。

だから、僕にとっては誰に見てもらうかを決めるのは簡単なことでした。

残りの人生ずっと、ホルモン注射を打ちながら日々生きていくような事にはしたくありませんでした。

この病気は治ることはないから、薬で症状を抑えながら生きるなんて、なんだか「その場しのぎの原始的」な方法のように僕には思えます。

体が不調を起こすには絶対に原因があるはずです。それを知り、その原因を徹底的に修正して、二度と同じ病気にはならない自分になりたいからです。

日本で20年ほど暮らして、僕がつくづく思うのは、日本には古くから伝わる伝統的な健康法や食べ物から栄養を取る知恵、リラックスできる伝統的な癒し法などがあって、それが生活の中に自然に溶け込んでいることです。

それなのに、日本人はそういうものからどんどん遠ざかってしまっているのを不思議に思いますし、残念でもあります。

今、欧米では、逆に東洋の医学や健康法に注目が集まっています。多くの人が病気を直すための代替方法を探しています。

その背景には、もちろん医療費がかかりすぎるという問題もありますが、薬漬けになっても病気が治らない、健康にならない事に、人は失望しているからです。

何千年もの歴史を持つ東洋の伝統的健康法や医学は、決して都市伝説ではありません。 一方で、現代医学はせいぜい150年くらいのものなのです。