後戻り禁止

2017年~2018年の年末年始、母国で過ごして日本に戻って来た僕は、いつも通りなかなか時差ボケが抜けず、4~5日グダグダと過ごしたあと、大きな仕事が待ち受けていました。

前年から決まっていた5日間の集中セミナーの講師を務めなければならなかったのです。

副腎疲労とわかった後、僕はほとんど仕事を受けないようにしました。

でもどうしても断れない、やらなければまずい仕事だけやると決め、その一つがこの5日間集中セミナーでした。

それだけ重要な仕事であるとともに、一日7時間の講義が5日間続く、今考えても恐ろしくなるような内容でした。

2018年が始まったばかりのこの時期、僕はまだまだ副腎疲労のど真ん中で、今の体調と比較すると天国と地獄ほどの違いです。

5日間のセミナーで使う教材や資料、PC、ビジネスホテルに宿泊するのでその支度など、準備段階ですでにいっぱいいっぱい。研修日の前日からホテルを取り、翌日からの超ハードな仕事に備えました。

ドリーが、セミナー会場に近いホテルを探して予約を入れてくれていました。

歩く距離はそう長くはないのですが、そこに辿り着くまでがものすごい急な登坂で、僕は大きなスーツケースを引っ張りながら、その坂道を上るという最後の難関を突破しなければなりませんでした。

ぜーぜー言いながら、何とかホテルにチェックインした時には、もうベッドに倒れ込むしかありませんでした。

 

さらに悲劇は続きます。天気予報で、その週は1日か2日程度雪が降ると言われていたのですが、5日間のうち4日間、雪が降り続き、道路には雪が積もっていました。

snow

朝は、下り坂で滑らないよう気をつけながら一歩一歩慎重に歩き、7時間の講義を終えた後、今度は登りをまた雪を踏みしめながら10~15分掛けて登っていく。

片手には傘、もう片方には重いカバン。なんでこんな目に会うのかと、もう半分笑ってしまうほどの悪運の持ち主です。

あの頃の僕の足がどんな状況だったか、このブログを以前から呼んでくださっている方ならお分かりかと思います。

自分の足が自分の足でないような、まったく力が入らず、膝の下からポキッと折れてしまうんじゃないかという不安感が常に付きまとう弱さでした。

そんな足で、雪の積もった急な坂を毎日登り降りする光景を想像してみて下さい。

この連続5日間の仕事は、あの時の自分にとっては拷問かと思うほど辛い時間でした。

講師を務める以上、受講者にモチベーションを与えられるように自分を鼓舞し続けました。

自分に鞭を打ち続けて、ゴールまで走り続けました。受講者の目からは、僕がどんな状況なのかなんてわかるはずもないのですが、一日の仕事が終わると僕はホテルのベッドに崩れ落ちるように倒れ込んでいました。

へとへと、とか、ぐったりとか、そんな言葉で表せるような疲れ具合ではありませんでした。

全プログラムを終え、金曜日の夜に駅のホームで電車を待っていた時には、完全にゾンビでした。あの5日間を途中で倒れずに最後まで終えたのは奇跡でした。

overlimit

しかし僕は悟っていました。

自分の体ができる事をはるかにオーバーしてやってしまった事。

そしてその結果、どんなことになるか、わかっていました。

ドクターにも伝えました。「体調を後戻りさせるようなことをしてはダメです。自分で注意しなければ誰も注意できないんですよ」と言われ、もちろんその通りだとわかっていたのですが、もうすでに手遅れでした。

その日を最後に、僕は完全なる自宅療養生活に入りました。

旅行にも一切行かず、ひたすら体を休め、心を癒し、回復することだけに専念する毎日です。

1年以上そんな日々を送り、今こうして改善を実感できるようになりました。

僕はいったい何度、後戻りしたでしょうか。どれだけ努力を無駄にしたでしょうか。

今振り返ると、あれはやるべきではなかった、ということが何度もあります。

今、副腎疲労の治療をがんばっている皆さんには、絶対にそのような無駄をしてほしくはありません。

毎日前進することは不可能でも、少なくとも”横ばい”であるべきで、決して後ろに戻るようなことはしてはいけません。休む時は休む!