スマホにビクつく僕

いつの頃からか、スマホが何か音をたてる度に体がビクッと反応しはじめ、次第に心臓が反応してドキドキしたり、体中に電気が走るような感覚に襲われるようになりました。

smartphone

昔は、スマホに(スマホの前はガラケーでしたが)電話がかかってきたり、メールが届いたりするのは、もっぱら遊びの誘いや、遠くの友達からの便り、家族からのメッセージが中心で、電話が鳴ると「誰からだろう」といそいそとチェックしたものです。

ですが、僕が会社を始めてから、スマホの役割はガラリと変わりました。スマホから届くのは、ほとんどが悪い知らせになってしまいました。二日酔いの外国人講師からのドタキャン電話、講師が来てないという生徒からの電話、警察から外国人を保護したがおたくの従業員か?という問い合わせ、外国人講師から辞める(契約途中で)という電話、外国人講師からお金を貸して欲しいという電話、外国人講師からクラスに問題児がいるという苦情、外国人講師が居酒屋で喧嘩して・・・・、外国人講師が・・・・、外国人講師が・・・

もうやめてくれ!

drunk

僕を一番苦しめたのは、朝、それもあと20分でその講師の授業が始まる、という時間に「悪いけど、きょうは行けない」という電話。こんな時間に電話してきて、一体どうしろ、と?頼むから、もう少し頭を使って、大人の対応をしてくれませんか?

この朝のドタキャン電話を、僕は一体何回受けたか、もうわからないくらいです。

良い知らせは10%、悪い知らせが90%。これが、この憎たらしいデバイスから届くものです。そんな状態が何年も続きました。

stress
朝起きてから、夜ベッドに入るまで、その小さなデバイスに届く悪夢のような知らせに、右往左往しながら、常に問題を解決し続けなければなりませんでした。そろそろ寝ようか、という時間に容赦なく掛かってくる電話で、またそこから一仕事しなければならず、興奮して頭が冴えてしまい、眠れなくなることもしょっちゅうでした。

そして朝になると、また新たな問題の知らせが、鳴り続けるというネバーエンディングストレスです。

僕は何年も何年もこのスマホに鎖でつながれた状態で、最後には、スマホが発するありとあらゆる音に、体が異常に反応するようになり、もうこれ以上無理、という状態になってしまいました。

chained

ドリーと相談して、外国人講師の管理者が必要と判断し、新たにマネージャーを採用することにしました。そして僕は自分にルールを決めました。会社の営業終了時間、午後6時以降は電話に出ないと決めました。音が出ないようにし、朝まで見ないようにしました。

外国人講師からの直接の電話は減りましたが、その代わり、新たに採用したマネージャーから、「こんなことを言ってきたんですけど、どうしましょう」という連絡がひっきりなしに入るようになりました。これじゃあ、あまり変わらないな…と思いましたが、それでもかなりストレスは軽減されました。

ただ、遅すぎたのです、もうすでに僕のストレスレベルは上がりすぎて、長く続きすぎて、もう体が対処できる段階をとうに過ぎていたのです。

help-me

ドリーのスマホの音にも僕は反応してしまう始末でした。結局のところ、彼女のスマホが鳴るケースも、殆どが仕事に関連したことだから、その内容は僕にも知らされて、結局なにか問題があれば対処しなければならない状況には変わりありませんでした。

ドリーからその内容を聞くことすらもうできなくなって、僕は何度か「それは今解決する必要のあることなのか、単に報告しているだけなのか、どっち?」と強く言ってしまったこともあります。それ以来、ドリーは僕に会社内の日々の小さな問題については、あまり言わなくなりました。

マネージャーが外国人講師とのやりとりを担ってくれるようになり、ようやく、僕のスマホは楽しい知らせの方が、不愉快な知らせより多くなり、電話に出ること、メールをチェックすることが少し楽にできるようになってきました。数年かかりました。

smartphone

この小さなスマホが、私にここまでストレスを与え、体を蝕むことになるとは想像もしませんでした。