クリスマスディナーに出かけてきました。ちょっとだけドレスアップして、ディナーコースをゆっくりと楽しみました。予約して食事に出かけることなんて、本当に久しぶりです。副腎疲労になってから、その日その日の体調がどんな具合か、まったくわからないので、事前に予定して出かけるとか、どこかに予約を入れるということをすっかりしなくなっていました。
この日は、4時半過ぎに家を出て、(夕食は5時頃に食べないといけないので)、お店の人とゆっくり話をしながら、ドリーがデザートを食べ終え、家に着いたのが8時半でした。4時間もの間外出して、しかも最後までエネルギーを保ち、疲れずに過ごせました。こんな小さなことに本当に嬉しくなってしまいます。
今日は、僕のことじゃなくて、ある人のことを書きたいと思います。僕と同じく日本に暮らす欧米人で、日本人の奥さんがいて、よく行くレストランのマネージャーをしています。クリスマスディナーも、彼のレストランでした。
年齢も近く、彼を見ていると、自分と重なるんです。
彼は、一週間に1日しか休みが無いのに、その休みの日に必ず飲みに出かけます。午後4時頃から飲み始め、午前2時~3時まで飲んだという話をよく聞きます。
休みの翌日は、彼のレストランに行かないようにしています。ほぼ100%二日酔いだから(笑)。毎回、どのくらい飲んだかを聞かされますが、まー、すごい量です。
クリスマスディナーの夜も、例のごとく、その前の休みの日にどれだけ飲んだかという話になりました。ビール、ワイン、ウイスキー、日本酒と飲み続け、そろそろ家に帰ろうと立ち上がろうとしたら、体が全然動かなくなったと言います。
頭は働いていて、ちゃんと話もできるし、記憶もあるのに、体がどうにも動かなかったので、12:30頃、奥さんに電話して、バーまで迎えに来て欲しいと言うと、奥さんはものすごく怒っていて、「あなた、子供以下じゃない!」と言って、電話を切られてしまったそうです。
酒を飲む。これはほとんどの欧米人が、いや全員と言ってもいいと思いますが、この日本でストレスを発散するために、とにかく酒を飲むんです。外国人じゃなくても、日々ストレスの多い仕事をしている人は、飲んで発散する気持ち、わかるでしょう。僕も同じ理由で飲んでいました。ただ、実のところ、ストレスを発散していると感じるのは飲んでいるその短い瞬間だけで、結局は状況を悪くすることの方が多いです。
彼の奥さんが電話で放った言葉「あなた、子供以下じゃない!」は、彼の心にストレスを与えたはずです。彼は誇り高い男で、奥さんにそんな風に言われるのは心外だろうし、傷ついたと思います。不愉快だったと思います。彼は、家族のためにものすごくハードに働いています。だから、ちょっとした事だけど、こういう言葉は、特に愛する奥さんからのこういう言い方は、時間が経つとともにますます心に刺さります。ものすごいストレスの中で、家族の為に一生懸命仕事をしているのに・・・という気持ちがあればなおさらです。
彼は家族のことを少し話してくれました。高校生の娘さんがいじめやひきこもりの問題を抱えていて、彼女のそばにいる時間を増やすため、彼は今の仕事についたと言います。それまでは世界中を飛び回るビジネスマンで、家にいる時間が殆どなかったそうです。家族を最優先に考え、ずっと日本にいて毎日家に帰れるレストランの仕事を選んだけれど、報酬は下がり、これまでの仕事と比べたら今の立場はかなりのステップダウンだと言います。
僕たちが初めてフラッと立ち寄った彼のレストランで、最初に少し話した時から、彼のプロフェッショナリズムやビジネス経験が垣間見えて、それがお店の運営にもよく現れていました。彼がこれまでやってきた国内外のいろいろなプロジェクトも、話を聞けば聞くほど大変な仕事だと思います。
トップにいた自分が今は底辺にいると、この日、僕たちに言いました。手がけてきた色々なビジネスが、すべてうまくいかなくて、結構な損失(多分、数千万単位で)も出してしまい、自信が持てないとも言っていました。
ストレスはどうかと聞いてみると、「すごくある」「小さな国でケチくさく、視野も考え方も狭い。そんな風に生きるのは本当に嫌気がさす」と言っていました。
一日に30杯のコーヒーを飲む彼。信じられますか?コーヒーを飲むと、気分が良くなると言います。はい、それは僕も経験済み。コーヒーは副腎を刺激して、一時的に元気が出ていい気分になりますが、その後すぐに効果が切れて、余計疲れてしまうんです。彼はそこで、またもう一杯、またもう一杯と飲んでしまうんです。僕も、コーヒー、緑茶、栄養ドリンク、とアドレナリンが切れないようにカフェインを飲み続けて、一日を乗り切っていました。
僕たちと話をしている時は、スッと立って笑顔で話していますが、一段落すると彼はキッチンの方へ行き、そこではカウンターに寄りかかるようにして、疲れ果てた感じの表情をしています。
彼が料理を運んでテーブルに置こうとしたとき、僕もドリーも彼の手がブルブルと震えていたことに気づきました。ちょっとどころじゃなくて、スムージーが作れるほど震えていたんです。
彼は自分で自分の手がものすごく震えていることに気づいて、料理を置くとすぐに、店の外に出てたばこを吸いはじめました。たばこを吸うと気持ちが落ち着く、と言いますが、たばことストレスの組み合わせは最悪です。
1~2カ月前に会った時には、膝がとても痛い、と言っていました。一つ一つが僕と完全に重なるんです。
たばこ、酒、カフェインで、手っ取り早くその場しのぎの応急処置は、体に大打撃を与えます。体はストレスを対処できなくなって、体内の臓器や神経系システムが悲鳴を上げているはずです。僕がそうでしたから。その後、どうなるか、ぼくは知っています。
彼が僕たちとしゃべっている時、何度か涙が溢れそうになっていました。本当は誰かの助けが必要なのに、そんなことは言えないし、弱い所は見せらせません。お店では強いリーダーシップでスタッフを導かなければなりません。
あの頃の僕とまったく同じです。来る日も来る日も、大量のエネルギーを注ぎ続け、ある日、それは突然すっからかんになるのです。彼にそんなことが起こらないように願うばかりです。
僕は、この日、彼に数回同じ言葉を掛けました。「Take it easy.(無理しないように)」と。でもできないんですよね。僕はそれもわかっています。そういうものなんです。
強いストレスの中で頑張っている人は、皆なぜか似たような行動をとります。体が発している警告サインに注意を払わず、まだまだいける、ガンガンやるぞ、と頑張り続けてしまいます。そして、ある時、体が尽き果てます。
一体何が起きたんだ、自分の体はどうなってしまったんだ?と初めて考えます。もっと自分の体に気を使うべきです。自分の体にどれほどの負荷がかかっているか、どれだけのストレスに対応できるか、自分で見極めるべきなんです。
副腎はギリギリまで頑張ります。最終局面では、異常なまでに頑張って、人は勘違いしてしまいます。まだまだいけそう、と錯覚するんです。そしてその後、急転直下で機能しなくなってしまいます。
そうなると、仕事はおろか、自分の身の回りのことも満足にできなくなり、回復するのにものすごい時間と費用がかかるのです。
自分の体にもっと注意を払って!自分の体はたった一つです。