京都の街で足に異変 2015年晩夏

2015年は副腎疲労の前兆と言えるような不調や体の変化が、毎月のように起きていました。次から次へと。でも僕は、一体何が起きているのか原因もわからず、ただただおびえるだけで、色々な医者に見てもらっては最後には「ストレスでしょ」と言われることの繰り返しでした。本当に仕事に追われる毎日で、ストレスはピークでした。僕もストレスをゼロにすることは無理でも、何とか和らげようと心がけていました。その一つの方法が、可能な時には東京を離れ、仕事をちょっと忘れて、リラックスしようと努力しました。

そんな思いで、3日間ほど京都に行くことにしました。京都は、日本に来て初めて訪れた時から大好きな場所でした。なかでも二条城や清水寺は僕のお気に入りスポットで、この短い旅行を楽しみにしていました。それに僕は新幹線に乗って駅弁を食べながら窓の景色を眺めているのも大好き。

予約してあった京都駅の近くのホテルにチェックインし、夕食をとるためこの日はホテル内のレストランへ向かいました。この時、僕はまだ糖質オフダイエットの最中で、レストランのメニューから、炭水化物のないもの(ごくわずかなもの)を選んで、ステーキと蒸し野菜、ワインを少し飲みました。春以来、ずっと感じている疲労感や、体を電気がビリビリっと走るようなしびれる感じは相変わらずありましたが、僕にはこういうリラックスする時間が必要なのだと信じて、京都を楽しもうとしていました。

翌朝、朝食の前に京都駅の周りを1人で散歩に出かけました。ホテルに戻る途中に、足に変な感じをおぼえました。うまく言い表せないんだけど、靴が緩くなったか、靴底がくたくたになってしまったような変な感触です。ホテルの部屋に戻って、すぐに履いていた靴を脱ぎ、底を確認したり、中のインソールがどうかなっていないか見てみましたが、何もおかしなことはありません。念のため、靴ひもを結び直しもしました。

ホテルのレストランで朝食を食べながら、海外からの観光客でいっぱいで英語や中国語や色々な言語が飛び交っている状況に、ちょっと楽しくなってストレスが少し和らいだ感じがしました。普段は、僕はやはり日本に住む外国人で、視線を感じたり、少数派であることを感じながら暮らしています。こうした些細な不自由感や緊張感が蓄積されてストレスになっていることは確かです。だからこのような人種が混在している所にいると、その緊張感から解放されます。

朝食後、市内を散策することにしましたが、電車や徒歩で行く気がまったくしなかったので、ホテルの前に止まっていたタクシーに乗り込み、まずは清水寺へと向かいました。タクシーで行けるギリギリのところまで行ってもらい、そこからは歩かなければなりません。

kiyomizu

延々と続く階段を見上げてちょっと不安になりましたが、ゆっくりゆっくりと登っていく最中、足のおかしな感じはなく、途中お茶屋さんで休憩して、抹茶と和菓子を少しかじりながら、ああ、大丈夫だ、と落ち着いた気持ちになっていました。

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またタクシーを拾って今度は二条城へ。僕はあの静けさと整然とした広い敷地がなぜか大好きで、ここでものんびりした時間を楽しむことができました。

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翌朝、再び僕は朝食前に散策にでかけ、そこでまた前日と同じように足がおかしな感じに気づきます。靴を脱ぎ、中になにか入っていないか、靴底がとれていないか、など確認し、もう一度履いて紐を結んだ時、確信しました。

おかしいのは靴じゃなくて、僕の足だ。ちゃんと地面を踏みしめて歩いていない、足がもわもわとして、感覚がおかしい。体というものは、全身がきちんと調和して組み合わさって機能しているべきものなのに、それがほどけて、緩んでしゃくしゃになって、自立できないような状態になっている、これがその時感じたことです。

この日も市内を数か所回りましたが、ちょっと歩くとすぐ疲れて休みたくなる。どこに行くのもタクシーで、電車やバスに乗ろうという気さえありませんでした。タクシーの運転手さんに、「は?そんなの5分も歩けばつくよ。その角曲がってすぐだから」と言われても、「それでもお願いします」と行って連れて行ってもらいました。

何かがおかしくなっている、体が言う事を聞かない、という不安が押し寄せてきました。それでもいろんな医者にいわれたように、「忙しすぎるんだ、ストレスが溜まっているんだ」と思い込み、なんとか今年度のスケジュールをこなしさえすれば、あとは楽になる、あと半年の辛抱だ、と言い聞かせました。

この京都での出来事をきっかけに、僕の足はどんどんおかしな感じになっていきます。足に力が入らない、まっすぐ歩いていない、地面をしっかり踏んでいる感覚が無い、ポキッと折れてしまいそう、そんな感じがどんどん積み重なって、もう車いすが必要になるんじゃないか、という気持ちにまでなってしまうのです。