何も持ち上げられない 2015年春

ジムでのウェイトトレーニングは20才の頃から続けていて、僕の生活の一部です。出張中など物理的に不可能な場合を除いて、欠かすことはありませんでした。僕は病気で寝込んだりすることが本当に無かったので、文字通り30年以上ほぼ毎日ジムに通っていました。2015年の春までは。

legmachine

いつものように足のトレーニング、レッグエクステンションから始まって、レッグカールと順番に進み、3つ目のレッグプレスに移った所で、それはいきなり来ました。力がすっからかんに抜け落ちたように、まったく足が動かない。ピクリともしないのです。僕はパニックになりました。うろたえました。いったい何が起きたのか?

この脱力は足だけに起きているのか確かめようとして、よろめきながら、ショルダーマシンに移動しました。えーーーー。これもできない。全然力が出ない。肩も腕もまったく上がらない。どうしようもない不安でいっぱいになりましたが、ジムにいた知人には「今日は全然力が出ないよ」と苦笑いをして、そこで終えることにしました。心の中では「完全に何かがおかしい」と叫んでいました。

この日を境に、僕は何かとても深刻な事態が体に起きていると、それも急激にスピードを増して体が崩壊していると確信しました。翌日からも僕は自分の体を確認するように、ジムには通い続けました。でもウェイトを持ち上げることは、ほとんどできなくなっていました。ついこの前まで、片方で20Kgくらい平気で上げていたのに、2.5Kgすら持ち上がらない。ショックでした。信じられませんでした。生まれてこの方、病気なんてまったくしたことが無い、倒れ込むことなんて一度もなかったのに。

gym

僕はすでに「カタボリック状態」に入ってしまっていたという事です。(もちろん後でわかったことですが)カタボリック状態とは、日本語で「異化」と訳せるのですが、よくわかりませんよね。かみ砕いて言うと、ヒトが普通に生きていく中で、食べ物が消化され栄養素に分解されていき、その過程で体を維持したり動かしたりするのに必要なエネルギーが放出される、これは自然なプロセスなのですが、バランスが崩れてカタボリックが強く起こりすぎてしまうと、体はずーっと休んでいない状態でエネルギーを放出し続け、体内に蓄えてあるエネルギーも使い果たし、結果的に筋肉の細胞を破壊してしまい、力を失ってしまうということなのです。

例えて言うなら、エネルギーを探し求めて、体が自分の体を食べてしまっているような状態です。体を維持するためのエネルギーは、ずーっと不足した状態になり、力が出ない、ぐったり疲れてしまう、という事なのです。

今だから、これも副腎疲労の一つの症状だと、わかったように説明していますが、その時は全く何がどうなってしまったのかわからず、僕は完全にショック状態で、日々落ち込んでいきました。日に日に弱くなっていくのを認識しながら毎日を送るのは恐怖でした。ちょっとしたことをしても、例えば歯磨きしたり、洗面所の鏡を腕を伸ばしてちょっと拭いたりするだけで、すぐに疲れてしまう。宅配便で荷物が届いても、それをひょいっと受け取ることができない。こんな状態が、ついこの前まで3年も続いていたのです。