これが「火事場の馬鹿力」ってやつ?

副腎疲労ステージ3の僕にとって、走ることはもちろん、普通に歩くことすらしんどい状況だったのに、人間ってすごいな、と思ったちょっと面白いことがありました。

”火事場の馬鹿力”です。

power

2018年に入ってから、僕はドクターに旅行を止められたため、どこにも行かず日本で療養生活に専念しているのですが、それ以前はストレスから解放されるために休みが取れた時には必ず海外に脱出していました。

海外旅行に出かけることは決して楽なことではありません。荷作りも疲れるし、でっかいスーツケースを引っ張って成田空港まで行くだけでもうヘトヘトになってしまうのですが、それでも現地に着くと、いつも気持ちがフッと楽になり、言葉も自由自在に使え、誰とでもどんな話題でも話せるし、やはり自分の肌に合う文化の中にいられることはなによりもリラックスできます。

そんなわけで、2016年の年末にハワイに行き、そこで起きた面白い出来事です。

ワイキキの中心部にあるインターナショナルマーケットプレイスに車で出かけました。

かつては、小さな屋台式の店がいくつも連なって、いつ行っても押しの強いアジア系のおばちゃんが「omiyage 80% off」と連呼している、さながら東南アジアの屋外マーケットのような趣の場所でしたが、すっかりおしゃれなショッピングモールに生まれ変わりました。

night market

その真新しいモールの駐車場から車を出そうと、出口のゲートで機械にチケットを入れました。ん?何も起きない。

料金が表示されるわけでもなければ、ゲートが開くわけでもなく、何か音を発するわけでもなく、とにかく何も起きない。ん?

ブレインフォグか、記憶がはっきりしないのか、集中力がないからなのか、自分がチケットを入れたのかどうかすら自信が持てなくなり、頭が大混乱し、ゲートの前に車を停めたままどうすることもできず、ちょっとしたパニック状態になりました。

parking

慌てて車を降り、機械の周辺や車の下にチケットが落ちていないか、何度も辺りをグルグルと探し回りましたが、何もありません。

後ろから車が来ていないか気にしながら、車の座席の下、助手席との間、座席の背もたれの隙間にチケットが落ちていないか探し回りましたが、見つかりません。

ポケット、財布の中、ドリーが持っていないか、とにかくありとあらゆる所を探しまくっても、どこにもありません。焦りとストレスで妙に動きまわっていました。

後からどんどん車が来て、自分のせいで車が詰まって、クラクション鳴らされたり、何やってんだ―とか言われないようにと思ったら、ますます焦ります。

日本と違って(最近は日本も怖いけど)アメリカでは、すぐカッとなる人が多いし、今の僕の体力では喧嘩もできない、と思っていました。

ticket machine

どこをどう探してもチケットは見つからず、機械に挿入したのだと確信し、事務所を呼び出す小さなボタンを押して、チケットを入れたのに何も反応しないと説明しました。

すると「そんな事は起きるはずがない。チケット紛失の場合はペナルティーとして5000円前後払う必要がある」と言って来たのです。そんな理不尽なことを飲み込めるわけがないですよね。

「チケットを無くしたんじゃなくて、機械に入れたのにまったく反応しないんです!」と繰り返し説明しました。事務所の女性もまた同じことを繰り返し、チケットが無いのならどうすることもできない。ペナルティーを払うしかない、それが規則だ、と言って譲りません。

僕は「そんなことはあり得ない。機械を開けて、調べてみてくれ」とかなり強く言いました。

他の車が来ないかずっと気にしながら、インターホンでやり取りを続け、ようやくその女性が見に来るということになったのですが、これがまた時間がかかって、なかなか現れません。

幸い、出口のゲートは2つあったので、完全に僕の車が出口をふさいでしまっているわけではなかったのですが、混雑している時なら、どれだけひんしゅくをかうかと思いながら、係員が来るのを待っていると、1台の大きなトラックがやってきて、すぐ横のゲートの前で停まり、右往左往している僕たちにどうしたのか聞くので、経緯を説明すると、自分のトラックの後ろにくっついて一緒に出たらどうか、と言うのですが、そういうリスクを冒してまで無理やり出る必要はないと思い、お礼だけ言いました。

しばらく待ってようやく係員の姿が見えました。僕がこんなに焦っているのに、ゆったりと歩いてくる典型的なアメリカ人の対応です。

小さなカギで機械の扉を開けて、チケットが溜まっている箱を取り出して中を見ると、チケットがたくさんたまっているその一番上に、僕が入れたチケットがありました。車のナンバーが印字されているので、すぐにわかりました。

彼女がチケットを取り出して「これね」と言った時、僕は「だーかーらー、最初っから言っているでしょうがー」と半ばあきれ気味に言いました。

彼女は一言「Sorry」と言い、僕は数ドル払って、彼女が手動で開けたゲートから脱出することができました。

driving
駐車場を出て走り出したところで、ドリーが言いました。「あんなに動いているエルを見たのは、すっごい久しぶり!びっくりした。」

確かに、あの頃は走るなんて絶対無理で、歩くスピードもドリーよりずっと遅くなって、何をするにもゆっくり、活動量が最小限の毎日だったので、ドリーが驚いても無理もありません。

と言うより、僕自身がちょっと我に返ってしまいました。もう一回やれ、と言われても絶対できません!

車を降りて、ゲートの周りを走りまわって、次に車の下、シートの周りを探して、また車に戻ってバックさせて、また下りて探して…こんなに瞬発力あったか…。

”火事場の馬鹿力”と言うほどの凄さではありませんが、ここぞという時にはこんな動きができるんだな…と。

ただ、この状態はもちろん続かず、神経が張りつめていて、その後あっという間に疲れ果て、部屋で休むことになりました。

あの時思った事は、大きな混乱に発展して収拾つかない事態になるのは避けなければ、という事だけでした。

体が万全な状態じゃない時、自分自身も、そして大事な人のことも守れないと自分で認識している場合、とにかくもめ事を避けようとする傾向になります。

特に海外ではその傾向が一層強くなります。隙だらけで誰からでも攻撃されやすいと思うと、いかなるトラブルも避けようとします。

支払い時のトラブルとか、運転中のトラブルとか、トイレでやばい人に出くわしてまったとか。

海外では警察も日本とは違って、何の理由もなくいきなり止められて、地べたに腹ばいになれ!などと言われることもあるので、ライトが切れていないかとか、スピードについても非常に神経質になります。

副腎疲労というのは、外から見れば普通の健康体に見えるのに、実はものすごく弱っているという、非常にまずい状態なわけです。

だから、身の安全とか、トラブル回避とか、そういうことに異常に神経質になって、常に守りの態勢になってしまうんだな、と改めて気づかされた出来事でした。