副腎疲労で全身がボロボロになってしまう仕組み

きょうは、ちょっと難しい話をしますよ。でもこの仕組みがわかれば、副腎疲労でなぜこれほどまでに体全体がボロボロに、そして頭までもボヤ―ッとなってしまうのかがよく分かります。

「副腎だけが、副腎疲労の影響を受けるわけではない」とドクターが言いました。

次から次へと、まるで体が壊れていくかのように色々な症状に見舞われる仕組みを説明してくれました。

副腎疲労症候群というのは、体がエネルギーを節約するために、生理的機能を低下させ、単純化させようとする人体の戦略的な方法なのです。疲労度が高くなればなるほど、体は自分の生理的機能を低下させます。

人体の最小限の生理的機能は何かというと、ずばり寝たきりになっている状態です。動物の世界では「冬眠」と言う状態です。

冬眠中は、使うエネルギーはごくわずか、最小限です。そう考えると、副腎疲労の重度の人が、起き上がることができず、一日中ベッドで横になっているしかない、というのも納得できます。

hibernation

副腎疲労が悪化してクラッシュしてしまい、体が活動を制御して減速し、生理的機能をできるだけ単純な状態にしようとする場合、最初にスイッチが切られるのは何でしょう? 最低限の生理機能を動かすのに必要とされていない臓器です。

人体が生存の危機に瀕している場合、生殖機能はいわば贅沢と言えるもので、生命の維持に関わるような機能ではありません。そこで一番に、性的な機能がスイッチを切られます。

甲状腺も同様に働きを抑えられてしまいます。体がエネルギーを節約するためには、基礎代謝を低下させる必要があるからです。

甲状腺が活発に働いていると、常にアイドリング状態になるので、それを止めようとするのです。しかしそのせいで、体は脱力感に襲われ、疲労が抜けなくなってしまいます。

胃や腸は、ストップさせるわけにはいきませんが、消化する働きを弱めます。消化酵素や胃酸の分泌を少なくし、胃の運動も遅くなります。

そのため加工食品や複雑な食べ物は、消化が難しくなり、吸収も悪くなってしまいます。その結果、お腹が張ったり、便秘やガスが溜まってしまうのです。

stomach

これが起こると、次に肝臓や腎臓も影響を受けます。どちらの臓器も、身体の毒素のクリーニングが役目です。肝機能が低下すると、代謝物質を分解することができなくなってしまいます。

有毒な代謝物質の蓄積が起き、それと同時に副生成物を体内から洗い出す機能も低下します。

脂肪の代謝物質は、体の中で脂肪がたくさんある所に集まっていく傾向があります。まるで似たもの同士がお互いを引き付けるように寄っていくんです。

brain

親油性のある臓器と言えば、脳がその一つです。脳は、脂肪などの代謝物を引き寄せやすいのです。

脳に脂肪性の代謝物が引き寄せられて蓄積し、物忘れしやすくなったり、脳に霧がかかったようにボーっとしたり、思考や決断に時間がかかるようになったり、不安になることが多くなります。重症になってしまうと、正常な脳機能が損なわれてしまうこともあります。

関節や筋肉にも代謝物質が蓄積してしまうことがあり、その場合、原因不明の筋肉痛や関節炎を引き起こします。

副腎疲労で、体のありとあらゆる部分にいろいろな症状が現れるのはこういうわけです。

tired

さらに体の機能が低下すると、エネルギーを作り出すために筋肉を壊しはじめ、タンパク質と筋肉の量が落ちはじめます。

これが起こると、体は異化状態になり、体重が減り、筋肉もどんどん落ちます。線維筋痛および慢性疲労が起きることもあります。

胃腸の機能も落ち続けるため、食欲がなくなっていきます。血糖が不安定でインスリン抵抗性がある人は、さらに悪化してしまう状態です。体内の電解質量も不安定になります。

この状態が続くと、身体はついに警報を発する状況になり、急性ストレス反応“闘争か逃走か反応”で、アドレナリンを放出します。

あまりにも多くのアドレナリンが出ると、このしつこい下降サイクルにさらに拍車をかけることになります。

ありとあらゆる不調が次々に現れ、その渦中にいる人にとってはもう何が何だかわからず、一体どうなってしまったのかと、本当に苦しみます。

でも、人体は生き延びるために、重要でない機能から順々にスイッチを切り、段階的にあらゆる臓器の機能を下げてシャットダウンしていくという方法をとるんだということを知り、落ち着いて論理的に考えれば、むしろ体が起こす奇跡の力に感動さえします。

最後には、もうこれ以上エネルギーを使わないようにするために、起き上がらず寝たきりにさせるわけです。

胃腸が働かず栄養を吸収できないので、ますます脱力し、心臓も不規則で、エネルギーを作ろうと筋肉をどんどん壊し、力が出なくなってしまい、精神的にも不安定になってしまうのです。日々の当たり前の作業すらできなくなってしまうはずです。

switchoff

次々に体の機能を下げていく作用は、身体が安定したと認識するまで決して止まりません。

体が必要とするエネルギーと、実際に入ってくるエネルギーが一致する時点です。体が生存の危機を感じることなく、生き残れると感じる時点です。

それは、悲しいかな、実際には起き上がれなくなって寝たきりになってしまう時点でもあるんです。

寝たきりになって、ようやく体は「これで生き残れる」と感じるわけです。

生き残るための体の戦略、この一連の人体の働きを理解できれば、次から次へと襲いかかる体の不調がどういう事なのかがよくわかります。

通常の医学で説明できないし、普通の検査で発見されない体内部の異常が、きちんと理由があって起きているのだと理解できます。

さらには、一般的な治療法が全然効かなかったり、時には悪化させてしまったりすることもある、ということがよく分かります。