ハリにダメ出し!

2年以上原因不明の疲労感や不調に悩まされていた僕に、副腎疲労であることを教えてくれたハワイの女性ドクター。あの時、僕は本当に救われた感じがしたし、彼女が良いと言ったことを完全に信じて、実践していました。テストステロンやDHEA、甲状腺などのホルモン系のサプリメントを始め、その他ビタミンBや肝臓のデトックスのためのサプリメントもいくつか飲むように指示され、早速購入して飲み始めていました。

彼女は自然療法の医師で、鍼治療の資格も持っていました。マッサージ、鍼治療、サウナはデトックスにとても良いので、継続して受けることや、1日30分程度は日に当たるようにと言われました。

鍼は1週間に1~2回が良いと言うので、僕はハワイ滞在中、1回60分の鍼を3~4回受けました。彼女は中国で東洋医学も学んできたので、『陰陽』についても説明してくれました。僕は陰と陽のバランスが崩れて健康も損なわれてしまっているので、鍼はとても良いというのです。僕はそれまで一度も鍼を試した事はなかったので、ちょっと怖い感じもありましたが、この最悪の体調の回復のためならと受けたのです。

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それはもう本当に気持ち良くて、「あー、僕にはこれが必要だったんだー」と、夢心地の中で思ったのです。だけどその後、自分の部屋に戻ると、ものすごい疲労感が襲って来て、しばらくの間完全にへたってしまいました。鍼を受ける前よりも、もっと疲れていました。初めて受けた鍼治療だし、ちょっと緊張もしてたし、それで疲れちゃったのかなと思い、あまり気にしませんでした。

1週間後にまた受け、その時も、もーこのままずーっとやっていたい、という気持ちになるほど気持ち良くて、特に背中の“ツボ”に打った時には、「何これ…めちゃくちゃ気持ちいい…」のです。それなのに、また部屋に戻るころには、もうぐったり、何をする気も出ないのです。これで良いのかな~などと言っていると、ドリーが鍼について調べてくれて、『血行が急激に良くなるために、だるさを感じたり、軽い疲労感や眠くなることがあるが、それは一時的な反応』などの説明が、日本の多くの鍼灸院のサイトに書いてある、との事だったので、そんなもんかと思っていました。

3回目の鍼の時に、ドクターに施術後の疲労感について聞いてみました。すると、僕の予想外の反応で、「変ねえ、普通はそんなに疲れを感じることはないんだけど…」と言って、首を傾げていました。

acupuncture

毎回彼女は鍼治療と、他のマッサージを組み合わせて施術してくれました。ある時は、アロマオイルのディープティシュー・マッサージ、またある時はカッピング(吸い玉)。ガラス製の小さなカップ容器を体に当てて、その中の空気を抜いて気圧を下げます。するとカップが皮膚に吸着して、体に溜まっていた老廃物をうっ血させて取り除く、というものです。が、そのカップの跡がものすごく濃い紫色にうっ血というか内出血してしまい、その丸い形が背中じゅうについて、1週間位は取れないのです。ドクターも、「背中を見て、びっくりしないでね」とか言っていましたが、僕はあまりのどす黒い跡にちょっとびっくりしちゃいました。

その日はどっと疲れてしまい、本当に何もしたくない、何もできないほどの疲労感でした。カッピングと鍼のダブルパンチで、どう考えても負荷のかけすぎでした。

cupping

日本に戻ってからも、鍼は続けました。ドリーに近所の鍼灸院を探してもらい、最初はついて行ってもらって、僕の体調を説明してもらい、副腎疲労の事も伝え、(まったく知らないようでしたけど)週に一度のペースでやってもらうようにしました。毎回、鍼灸院を出て、歩き出すとフラフラしてちょっとやばいかも、と感じました。異常な疲労感だったのです。でも僕は続けていました。

そして続けること3カ月弱、ドクターAによって、またこれもストップがかけられました。鍼は刺激が強すぎて、副腎疲労が進んだ人ならすぐにクラッシュしてしまう、という事でした。その通りで、ハワイでも日本でも鍼治療の直後に襲い掛かるあの強烈な疲労感は、恐ろしいほどでした。このようなクラッシュは、絶対に避けなければならない、とドクターAに強く言われました。

鍼もカッピングも、たいていは人をリラックスさせ、良い効果をもたらすはずのものですが、僕のような副腎疲労が進んでしまった人には、まったく正反対の影響を及ぼしてしまうのだそうです。なぜなら、体の状態がすでに普通じゃないから。体に与える刺激には、本当に細心の注意を払わなければならないのだと言います。鍼治療やマッサージのセラピスト、整体師、また医師でも副腎疲労について深い知識を持っていない人が、安易に勧めてはいけないんだと強調していました。『普通の体じゃない』この言葉は、その後も何度もドクターAの口から発せられました。